フィリピンの外資出資比率規制に関する法律1

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フィリピンにおける外国人投資家の出資比率制限については、「外国投資法(Foreign Investments Act of 1991)」 および 「外国投資ネガティブリスト(Foreign Investment Negative List: FINL)」 で規定されています。完全な51%以上という規定ではなく、業種によって制限が異なり、フィリピン人による60%以上の出資が求められる分野がある一方、100%外資が可能な分野もあります。

公的機関の原文情報と、その和訳、要約をまとめました。

フィリピンの外資出資比率規制に関する法律

1. 外国投資法(Foreign Investments Act of 1991)第3条

  • 原文(抜粋): “a. the term “Philippine National” shall mean a citizen of the Philippines or a domestic partnership or association wholly owned by citizens of the Philippines; or a corporation organized under the laws of the Philippines of which at least sixty percent (60%) of the capital stock outstanding and entitled to vote is owned and held by citizens of the Philippines…”
  • URL:
    https://investmentpolicy.unctad.org/investment-laws/laws/587/philippines-an-act-promoting-foreign-investments (UNCTADの投資政策ポータル)
  • 翻訳: 「a. 「フィリピン国民」という用語は、フィリピンの市民、または市民が完全に所有する国内のパートナーシップもしくは団体を意味する。または、フィリピンの法律に基づいて組織され、発行済みで議決権を有する資本株の少なくとも60%がフィリピン市民によって所有および保有されている会社を意味する…」
  • 要約:
    この条文は、どのような主体が「フィリピン国民」とみなされるかを定義しています。株式会社の場合、議決権付き株式の60%以上をフィリピン市民が保有していることが「フィリピン国民」である条件の一つとして規定されています。これは、特定の業種においてフィリピン人出資比率の下限を間接的に示す基礎となる定義です。

2. 外国投資ネガティブリスト(FINL)の概念

  • 原文(抜粋): “The Philippines’ FINL is an executive order that governs where foreign entities are prohibited from investing. This legislation outlines the business sectors in the Philippines that are fully and partially available for foreign investment.””g. the term “Foreign Investments Negative List” or “Negative List” shall mean a list of areas of economic activity whose foreign ownership is limited to a maximum of forty percent (40%) of the equity capital of the enterprises engaged therein.”
  • URL:
    https://philippines.acclime.com/guides/foreign-investment-negative-list/ (Acclime Philippinesによる解説)
    https://investmentpolicy.unctad.org/investment-laws/laws/587/philippines-an-act-promoting-foreign-investments (UNCTAD)
  • 翻訳: 「フィリピンのFINLは、外国企業の投資が禁止される分野を定める大統領令です。この法律は、フィリピンにおいて完全に、または部分的に外国投資が可能な事業セクターを概説しています。」「g. 「外国投資ネガティブリスト」または「ネガティブリスト」という用語は、外国所有がその事業に従事する企業の資本金の最大40% に制限されている経済活動領域のリストを意味する。」
  • 要約:
    「外国投資ネガティブリスト(FINL)」は、憲法や特定の法律により外資の出資比率が制限されている業種をまとめたリストです。このリストでは、業種によって制限内容が異なり、多くの場合は外資40%まで(つまりフィリピン人側が60%以上) という出資比率が規定されています。現在は第12版が発効されています。

3. ネガティブリストで外資比率が制限される業種の例

FINL(List A)では、例えば以下の業種で外資比率が40%以下(フィリピン人比率60%以上)に制限されています。

業種(英語)業種(日本語)最大外資比率例外・備考
Mass mediaマスメディア0% (完全禁止)録音やインターネット関連事業は例外
Practice of professions専門職の開業 (例: 法律, 医療)0% (完全禁止)相互主義協定に基づく条件付き例外あり
Construction and repair of locally funded public works地元資金による公共工事の建設・修繕40%外国資金プロジェクトは例外
Exploration, development and utilization of natural resources天然資源の探査・開発・利用40%大統領との技術援助協定は例外
Ownership of private lands私有地の所有0% (原則禁止)元フィリピン生まれ市民など例外あり
Operation of public utilities公共事業の運営40%2022年公共サービス法改正で通信等は外資100%可能に
Educational institutions教育機関40%宗教団体設立の学校等は例外
Advertising広告業30%

4. 外資100%が可能な場合

重要なのは、全ての業種でフィリピン人51%以上の出資が必要なわけではない点です。

  • FINLに記載のない業種: 外国投資法により、100%外資で法人を設立することが可能です。
  • 輸出企業: 生産量の60%以上を輸出する「輸出企業」は、FINLに掲載されていない限り、100%外資が可能です。
  • 最低資本金要件: 外資100%でかつ国内市場向けの事業を行う場合は、原則として20万米ドルの払込資本金が必要です。ただし、先端技術企業である、スタートアップとして認定されている、15人以上の直接雇用を創出する、などの条件を満たせば、10万米ドルに軽減されます。

まとめ

  • 法律の根拠: フィリピン人による出資比率の規制は、外国投資法(Republic Act No. 7042) およびこれに基づいて定期的に発表される外国投資ネガティブリスト(FINL) で規定されています。
  • 規制の内容: 「フィリピン人が常に51%以上必要」という単一の規則ではなく、業種ごとに異なります
    • FINLのList Aに記載されている業種(憲法・法律で規制される分野)では、外資比率が40%以下(フィリピン人比率60%以上) が原則です。
    • FINLに記載のない業種や輸出企業については、100%外資での設立が可能です。
  • 情報の探し方: 最新のFINLは大統領令として公布されます。原文を確認するには、Official Gazette(フィリピン政府公報)やSEC(証券取引委員会)NEDA(国家経済開発庁) などの公的機関のウェブサイトで公布された大統領令を検索する必要があります。今回はその概念と内容を理解するために、関連法を引用している国際機関のデータベースや、現地の専門家による解説ページを参考にしました。

フィリピンへの進出を検討されているのであれば、まずご自身の参入したい業種が外国投資ネガティブリスト(FINL)に掲載されているかどうかを確認することが、出資比率を決定する第一歩となります。

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