フィリピンで外資100%が出資できない業種とは?ネガティブリストを詳しく解説

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フィリピンに進出する外国企業や起業を考える方にとって、「どの業種でどの程度出資できるのか」 は最も重要な問題の一つです。フィリピンには「外国投資ネガティブリスト(Foreign Investment Negative List: FINL)」 という制度があり、憲法や法律によって外国人の出資比率が制限されている業種が明確に定められています。本記事では、外国人だけで資本構成することが問題となる業種、つまり外資100%が出できない業種に焦点を当て、詳細に解説します。

ネガティブリスト(FINL)の基本構造

フィリピンのネガティブリストは、その規制の根拠により、リストAリストBの2つに大別されます。

  • リストA: フィリピン共和国憲法または特定の法律に基づいて外国資本の参入が禁止または制限されている業種です。
  • リストB: 安全保障、防衛、公衆衛生、公序良俗の保護、あるいは中小企業の保護を理由として外国資本の参入が制限されている業種です。

外資100%が出資できない主な業種と制限内容

以下に、ネガティブリストに基づき外資の出資比率が制限されている主な業種と、その制限内容をまとめます。

リストA:憲法・法律で制限される業種

業種最大外資比率備考・例外
マスメディア0% (完全禁止)レコーディング事業やインターネットアクセスプロバイダーは除く。
各種専門職0% (完全禁止)弁護士、会計士、犯罪捜査、放射線技師、船舶職員など。外国人がこれらの職業を開業することは禁止ですが、雇用されることは可能な場合があります。
小売業0% (完全禁止)払込資本金が250万米ドル未満の場合、外資は禁止。資本金が250万米ドル以上であれば、外資100%が可能。
広告業30%
建設業40%国内資金による公共事業の建設・修繕が対象。BOT法に基づくインフラプロジェクトや国際入札のプロジェクトは例外。
天然資源の探査・開発・利用40%大統領が承認する技術援助協定の下では、外国資本100%の参入が可能な場合があります。
私有地の所有40%外国個人や外資企業による直接の土地所有は原則不可。リース契約は可能(最長50年)。
公益事業の運営40%ただし、発電事業および送電事業は2022年の公共サービス法改正により、外資100%が可能になりました(但し、配電、上下水道等は引き続き40%制限)。
教育機関40%宗教団体が設立した学校、外交官子女向けの学校、非公式な高度技能開発トレーニングセンターは例外。

リストB:その他の規制業種

業種最大外資比率備考・例外
火器・爆発物などの製造40%フィリピン国家警察(PNP)の許可が必要な品目。
軍需品の製造40%国家防衛省(DND)の許可が必要な品目。
危険薬物の製造・流通40%
マッサージクリニック、サウナ40%公衆衛生や道徳に影響を及ぼす可能性のある業種。ただしウェルネス施設は除外される場合があります。
賭博業(レース場等)40%フィリピン娯楽賭博公社と契約があり、フィリピン経済区庁(PEZA)の認定を受けた事業は除外。
国内市場向け企業40%払込資本金が20万米ドル未満の企業。資本金が20万米ドル以上であれば、外資100%が可能(後述)。

重要な例外と資本金要件

これらネガティブリストに該当しない業種については、原則として外資100%での出資が可能です。

また、リストに該当する業種であっても、一定の条件を満たせば外資100%が認められる場合があります。その最も代表的なものが「最低払込資本金」 の要件です。

  • 外資100%で国内市場向けの事業を行う場合、原則として20万米ドル以上の払込資本金が必要です。
  • ただし、以下のいずれかの条件を満たす場合は、この要件が10万米ドルに軽減されます。
    • 科学技術省が認定する先進技術を利用している。
    • スタートアップ企業として承認されている。
    • 15人以上のフィリピ人を直接雇用している(以前は50人以上でしたが緩和)。

この資本金要件を満たすことで、たとえネガティブリストの業種(例:飲食業や一部のサービス業)であっても、外資100%での進出が現実的に可能になる場合があります。

その他の重要な進出オプション

輸出型企業(Export Enterprise)

製品やサービスの売上の60%以上を輸出している企業は、ネガティブリストに掲載されていない限り、外資100% が認められ、最低資本金の要件もありません

経済特区(PEZA)への進出

フィリピン経済区庁(PEZA)が管理する経済特区に立地する企業は、輸出企業であるなど一定の条件を満たせば、外資100% が認められ、さらに所得税の免除輸入関税の免除などの大幅な優遇措置を受けることができます。IT-BPO企業など多くの外資系企業がこの制度を利用しています。

まとめ

フィリピンでは、憲法や法律で国民に予約されているとされる業種(マスメディア、専門職等) や、安全保障・公序良俗に関わる業種について、外資100%の出資が禁止または制限(多くは40%以下)されています。

しかし、・資本金要件(20万米ドル or 10万米ドル)を満たす
・輸出企業として登録する
・経済特区(PEZA)を利用する
といった方法を活用することで、規制の対象となる業種以外では外資100%での進出が可能であり、場合によっては規制業種でも実質的に参入できる道があります。

フィリピンへの進出を考える際は、まず自身の参入したい業種がネガティブリストのどの分類に該当するのかを確認し、その上で最適な事業形態や資本政策を検討することが成功の鍵となります。最新で詳細な情報については、専門家への相談やフィリピン証券取引委員会(SEC) などの公的機関の確認を強くお勧めします。

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