フィリピンでGoogleやFacebook、Amazon、YouTubeのような大規模プラットフォーム事業、または中小企業としてTwitterやYouTubeを活用したマーケティング事業を立ち上げる場合、業種によっては100%外資出資が可能です。ただし、フィリピンには「外国投資ネガティブリスト(FINL)」という規制があり、対象となる業種では出資比率に制限があります。
以下の表に、ご関心のある事業内容と想定される出資比率の目安をまとめました。
| 事業内容 | 想定される業種分類・備考 | 最大外資比率 | 主な条件・注意点 |
|---|---|---|---|
| Google, Facebook, Amazon, YouTubeなど | 大規模プラットフォーム運営(通信・放送に該当する場合、またはデータセンター等の重要インフラを扱う場合) | 40%以下 | 公共サービス法改正により電気通信事業は外資100%可能だが、放送やその他の公共事業は規制対象残る。 |
| のプラットフォーム運営事業 | |||
| Twitter, YouTubeなどを利用した | デジタルマーケティング、広告代理店、SNSコンサルティング(一般に、FINLの制限対象外と解釈されることが多い) | 100% | 国内市場向けで外資100%の場合、原則20万米ドル以上の払込資本金が必要(条件により10万米ドルに軽減可能)。 |
| マーケティング事業(中小規模) | |||
| 上記マーケティング事業(輸出向け) | 売上の60%以上を輸出する「輸出企業」として登録 | 100% | 輸出企業はネガティブリストに該当しない限り最低資本金要件も免除。 |
| PEZA(経済特区)内での事業 | PEZA認定を受けた輸出向け事業(IT-BPOなど) | 100% | PEZAの優遇措間(法人税の免除等)を受けるためには、PEZAが定める輸出比率などの条件を満たす必要がある。 |
📊 外資規制の基本とネガティブリスト
フィリピンでは、外国投資法に基づき、「外国投資ネガティブリスト(FINL)」 が定期的に更新されます。このリストは、国家安全保障、公益、国内中小企業の保護などの観点から、外国資本の参入が禁止または制限される業種を列挙したものです。
- リストA: 憲法や特定の法律で外国資本が制限されている業種(例:マスメディア、特定の専門職、天然資源の開発など)が記載されます。
- リストB: 安全保障、防衛、公衆衛生、公序良俗の保護、または中小企業の保護を理由として外国資本が制限される業種が記載されます。
デジタル・マーケティング事業は、一般的にこのネガティブリストに明示的に記載されていないことが多く、100%外資での進出が可能である場合がほとんどです。
⚠️ 資本金に関する要件
外資100%で国内市場向けの事業を行う場合は、原則として20万米ドル以上の払込資本金が必要です。ただし、以下のいずれかの条件を満たす場合は、この要件が10万米ドルに軽減されます。
- 科学技術省(DOST)が認定する先進技術を利用している。
- 革新的新興企業法(Innovative Startup Act)に基づき、「スタートアップ」 または 「スタートアップ支援機関」 として承認されている。
- 15人以上のフィリピ人を直接雇用している(以前は50人以上でしたが緩和)。
一方、輸出企業(生産高またはサービス売上の60%以上を輸出する企業)として登録する場合、ネガティブリストに該当しなければ最低資本金要件はありません。
🧭 事業形態とその他の選択肢
- 経済特区(PEZA)の利用: PEZAは外国資本の誘致を目的に設けられた特別機関で、認定を受けた企業は外資100% が可能で、法人税の免除や輸入関税の免除などの大幅な優遇措置を受けることができます。IT-BPO企業など多くの外資系企業がこの制度を利用しています。
- 現地法人(Stock Corporation): 複数の株主がいる一般的な株式会社形態です。外資100%も可能です。
- 一人株式会社(One Person Corporation, OPC): 株主が1名のみの法人形態です。機動性が高く、取締役会が不要などの利点があります。ただし、外資が100%の場合は、前述の外国投資法の資本金要件(20万米ドルまたは10万米ドル)を満たす必要があります。
🔍 重要なおことわりと次のステップ
- 事業内容の詳細確認が必要: 「マーケティング事業」と一口に言っても、その事業内容が広告業(ネガティブリストで外資比率30%以下に制限される場合がある)に該当するかどうか、あるいは扱うデータの性質によっては他の規制がかかる可能性もゼロではありません。
- 法改正の可能性: 外資規制は法改正により変更されることがあります。最新の情報は、フィリピン証券取引委員会(SEC) やフィリピン投資委員会(BOI) などの公的機関で確認するか、現地の法律専門家に相談することを強くお勧めします。
- プラットフォーム運営事業の注意点: GoogleやFacebookのような大規模プラットフォームの運営、あるいはデータセンターなどの重要インフラを扱う事業については、電気通信事業や放送事業などの規制が絡む可能性があります。2022年の公共サービス法改正により、電気通信事業は外資100%が可能になりましたが、その他の公共事業(送配電、上下水道等)は引き続き規制が残っています。また、データプライバシー法などの他の法令も遵守する必要があります。
💡 まとめ
フィリピンでTwitterやYouTubeを活用したデジタルマーケティング事業を立ち上げる場合、それはネガティブリストに該当しない可能性が高く、100%外資出資が原則可能です。
ただし、
- 国内市場向けで外資100%の場合、資本金要件(20万米ドル or 条件付きで10万米ドル)を満たす必要があること、
- 可能であれば輸出企業として登録するか、PEZA経済特区を利用することで、資本金要件の免除や税制優遇などのメリットが得られる可能性があること、
- 事業内容によっては、広告業などの規制が適用される可能性が完全には排除できないこと、
を踏まえて、事前のリサーチと専門家への相談を慎重に行うことが成功の鍵となります。
最終的な判断の前には、必ずフィリピンの法律の専門家やコンサルティング会社に最新の情報を確認されることを強くお勧めします。
(この情報は2025年9月14日時点のものです。法改正等により状況が変化している可能性があります。)



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