はじめに
ウズベキスタンは中央アジアに位置する成長著しい市場であり、近年日本企業からの関心も高まっています。しかし、異なる法体系や商習慣を持つウズベキスタンでのM&Aには、特有の法的リスクが潜んでいます。本記事では、ウズベキスタンでM&Aを検討する日本企業が知っておくべき法的注意点を解説します。
1. 外資規制と業種制限
ウズベキスタンでは、外資参入が制限される業種があります。M&Aを検討する際は、対象企業の事業領域が外資規制の対象外であるかを確認することが第一歩です。規制業種であれば、特別な認可が必要となる場合や、出資比率に制限がかけられている可能性があります。
2. 認可・承認プロセス
ウズベキスタンでのM&A取引では、競争保護当局(Antimonopoly Committee)の承認が必要となる場合があります。これは、取引が市場競争に与える影響を審査するためのプロセスです。提出書類の準備から承認取得までに数ヶ月を要することも珍しくないため、スケジュールに余裕を持たせることが重要です。
3. 労働法制への配慮
現地の労働法制や慣行は重要な検討事項です。M&A後も従業員の雇用契約を継承する必要がある場合がほとんどであり、現地の労働法に基づいた適切な対応が求められます。一方的な雇い止めや労働条件の変更は、法違反となる可能性や労使紛争の原因となるリスクがあります。
4. 税制の理解
ウズベキスタン特有の税制を理解することも重要です。株式譲渡益に対する課税関係、グループ内取引に関する移転価税制、M&Aデッドに関する税務処理など、専門家の助けを借りて詳細を検討する必要があります。適切な税務デューデリジェンスと買収スキームの設計が、予期せぬ税負担を避けるために不可欠です。
5. デューデリジェンスの重要性
現地企業に対する法的デューデリジェンスは必須です。特に以下の点に注意が必要です。
- 権原の確認: 土地、建物、知的財産権などの重要な資産に対する所有権や使用権が適切に取得されているか
- 契約関係: 重要な取引先との契約に変更条項や譲渡制限条項が含まれていないか
- 法遵守状況: 業法や環境規制などの重要な法令に違反がないか
- 訴訟リスク: 現在係争中の事件や潜在的な訟リスクがないか
6. 契約条項の注意点
現地の法習慣や司法実務を反映した現地適応型の契約条項を盛り込むことが望ましいです。また、準拠法や紛争解決手段(裁判管轄や仲裁)についても、事前に合意しておく必要があります。
7. 争端解決手段の選択
万が一紛争が生じた場合に備え、あらかじめ争端解決手段を定めておくことが望ましいです。ウズベキスタンでは、国際商事仲裁を選択するケースが増えています。仲裁条項を設ける場合は、仲裁機関、仲裁地、仲裁言語等を明確に規定する必要があります。
まとめ
ウズベキスタンでのM&Aを成功させるには、現地の法的環境や商習慣を深く理解し、適切な専門家の支援を得ながら、リスクを適切に管理することが重要です。特にデューデリジェンスの徹底と現地に即した契約設計が、想定外のトラブルを避けるためのカギとなります。



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